広島高等裁判所 平成2年(行コ)3号 判決 1990年7月18日
神戸市垂水区狩口台一丁目一四番一〇一号
控訴人
林和彦
広島県呉市西中央二丁目一番二一号
被控訴人
呉税務署長
北條靖男
右指定代理人
宮本直文
同
河田俊夫
同
木村守孝
東京都千代田区霞ケ関三丁目一番一号
被控訴人
国税不服審判所長
杉山伸顕
右指定代理人
今井武志
同
荒木稔
右被控訴人両名指定代理人
見越正秋
同
藤井孝
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人呉税務署長が昭和六二年四月六日付けでした控訴人に対する相続税無申告加算税賦課決定を取り消す。
3 被控訴人国税不服審判所長が平成元年五月三一日付けでした、前項の決定に対する控訴人の審査請求を棄却する旨の裁決を取り消す。
4 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
主文同旨
第二当事者の主張
次に訂正・付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
原判決四枚目表七行目から次行にかけての「には次のとおり違法・無効の瑕疵がある」を「には、次のとおり瑕疵があり、違法ないし無効なものである」と改める。
同五枚目表六行目の「法」を「「法」」と改め、次行の「六六条」の次に「(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの、以下同じ。)」を加える。
同五枚目表末尾から同裏一行目にかけての「租税法」の次に「に基づく行政処分」を加える。
同五枚目裏三行目の「帰結として」の次に「憲法三一条あるいは条理上から」を加える。
同五枚目裏九行目の「重大かつ明白」の次に「な瑕疵であるというべき」を加える。
同六枚目裏六行目の「申告には」の次に「法六六条一項本文ただし書の」を加える。
同七枚目表九行目の「昭和六一年」を「昭和六二年」と改め、同一〇行目の「相続人らに対し、」の次に「法六六条一項本文を適用して、」を、同末行の「賦課決定」の前に「本件」を、それぞれ加える。
同七枚目裏五行目から同七行目の「(昭和六二年法律第九六号の規定による改正前のもの。以下同じ。)」を削除し、同末行の「法六六第三項」を「法六六条三項」と改める。
同八枚目表一行目の「前記」を「本件」と改め、同三行目の「異議決定」の次に「(以下「本件異議決定」という。)」を加える。
同八枚目表一〇行目の「本件賦課決定」から同八枚目裏五行目末尾の「何等違法でない。」までを、次のとおり改める。「本件賦課決定は、本件異議決定により一部取り消され、これにより、法六六条一項本文の適用を排し、同条三項を適用して、本税の一〇〇分の五の割合の加算税を賦課することに改められた。
したがって、本件賦課決定の適用法令の誤りの瑕疵は、本件異議決定により治癒されたものというべきである」
同一〇枚目表三行目の「主張するが、」の次に「本件賦課決定においては、」を加える。
同一〇枚目裏九行目の「無効の」を「重大かつ明白な」と改める。
同一一枚目表一行目冒頭から同四行目末尾までを、次のとおり改める。
「本件裁決は、もともと存在したことのない原処分(法六六条三項を適用した処分、すなわち、本件異議決定)の適法を宣言した違法・無効なものであり、この瑕疵は、本件裁決の固有の瑕疵というべきである。」
第三証拠関係
原審の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は、本件賦課決定の取消しを求める請求については、本件賦課決定のうち本件異議決定により取り消された部分の取消しを求める訴えを却下し、その余の請求を棄却すべきであり、本件裁決の取消しを求める請求については、全部棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に訂正・付加するほかは、原判決理由中の説示と同一であるから、これを引用する。
原判決一一枚目裏五行目の「争わない」の次に「ので自白したものと看做す」を加える。
同一一枚目裏八行目の「効力」の前に「行政処分としての」を加える。
同一二枚目表二行目の「賦課決定」の前に「の本件」を、同行の「異議決定」の前に「本件」を、それぞれ加える。
同一二枚目表六行目冒頭から同裏三行目末尾までを削除する。
同一二枚目裏四行目から次行にかけての「異議決定」の前に「本件」を加える。
同一二枚目裏九行目の「適法性」を「取消事由の存否」と改める。
同一二枚目裏一〇行目冒頭から同一三枚目表七行目末尾までを削除する。
同一三枚目表八行目の「2」を「1」と改め、同行の「原告は、」の次に「本件相続人らの期限後申告について、」を加える。
同一三枚目裏四行目の「事実」を「遠隔地勤務等の前記事実」と改め、同五行目の「いうことは」の次に「到底」を加える。
同一三枚目裏七行目の「3」を「2」と改め、同行の「理由附記」の前に「根拠条文及び」を加える。
同一四枚目表一行目の「その決定通知書」を「決定通知書」と改め、同六行目の「できず、」の次に「明文上の規定がなくとも憲法三一条ないしは条理上、理由附記を要請されている場合とまでは解されないので、」を加える。
同一四枚目表七行目の「4」を「3」と改め、同九行目の「右賦課決定は無効である」を「本件異議決定により一部取消しがなされたとしても、法八三条三項による処分の変更であって、右瑕疵が治癒されるものではない」と改める。
同一四枚目表一〇行目冒頭から同一四枚目裏四行目末尾までを次のとおり改める。
「そこで検討するに、前記争いのない事実によれば、本件賦課決定は、本件相続人らの期限後申告について、法六六条一項本文を適用して本税の一〇〇分の一〇の割合の無申告加算税を課したところ、本件異議決定では法六六条三項を適用して本税の一〇〇分の五の割合の無申告加算税を課すべきであるとして本件賦課決定の一部を取り消したものであり、本件異議決定の判断は相当と解されるから、その意味では、本件賦課決定は適用条文を誤った瑕疵があり、違法な行政処分であるといわなければならない。
しかしながら、国税の期限後申告については、法は原則として六六条一項本文による無申告加算税の賦課を定め、特例として、同条三項により、期限後申告が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正または決定があるべきことを予知してなされたものでないときは、右無申告加算税を減縮する扱いをしているものと解される。
したがって、本件賦課決定が、本件相続人らの期限後申告につき、右原則的扱いとしての法六六条一項本文を適用したことは、重大かつ明白な瑕疵とまではいえず、しかも、本件異議決定により法六六条三項を適用すべき場合であるとして本件相続人らの無申告加算税を減縮しているから、本件賦課決定の右瑕疵はすでに是正されたものと解するのが相当である。
控訴人は、本件異議決定は、本件賦課決定とは別個の、法八三条三項に基づく処分の変更であり、本件賦課決定の右瑕疵を治癒させるものではない旨主張するが、ひっきょう独自の見解であって、採用することができない。」
同一四枚目裏五行目の「5」を「4」と改め、同行の「本件賦課決定」から同七行目末尾までを、次のとおり改める。
「以上の次第で、本件賦課決定における適用条文の誤りの瑕疵は、重大かつ明白なものとまではいえず、かつ、本件異議決定により是正されたものであり、本件異議決定により一部取り消された部分を除く本件賦課決定の取消しを求める請求は理由がなく棄却すべきである。」
同一四枚目裏八行目の「適法性」を「取消事由の存否」と改める。
同一四枚目裏一〇行目の「異議決定」の前に「本件」を加え、同一五枚目表六行目の「審査裁決」を「本件裁決」と改める。
同一五枚目表七行目の「被告国税不服審判所長」の前に「したがって、」を加え、同行の「審査裁決」から次行の「認められないので、」までを削除する。
二 よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山田忠治 裁判官 佐藤武彦 裁判官 難波孝一)